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株式会社 東峰
日本で唯一の象嵌作家である父東峰の元で修業し、象嵌技術を修得した塩島敏彦は1983年、途絶えて久しい幻の装飾品ピクゥエを100年の空白から再現した東峰の代表です。
渡英して入手したピクゥエを徹底的に解体し、完全模倣する過程で、同じ象嵌技術で作られたピクゥエに塩島敏彦の様々な技術が駆使され、現代感覚が付与された全く新しいピクゥエが日本から誕生したのです。
ピクゥエの技術は一家相伝であったために技術継承が途絶えたヨーロッパの歴史に学び、塩島敏彦は株式会社東峰を設立し、東峰のメイン商品としてピクゥエを製作、販売してきました。会社設立は同時にピクゥエを塩島敏彦個人の技術から株式会社東峰の技術にすることであり、ピクゥエを製作できる習熟した技術者を養成することでした。長い期間を要する技術者の養成は、会社経営上は重い負担となりましたが、そのリスクに立ち向かわなければ、素材とデザインを生かす確かな技術力は育たず、バランスのとれた宝飾品には結実されません。
宝飾メーカーに王道があるならば、ものづくりの原点である作りの技術力を会社として妥協することなく追求し、蓄積して行くことだと考えています。
宝飾品のコストパフォーマンス
日本の自動車が欧米でも高い評価を受けているのは機能商品としてのコストパフォーマンスにあります。大衆車といわれる1500ccクラスの自動車の価格は100万円前後ですが、安全基準をクリアーし、エアコン、パワーステアリング、パワーウィンドウ等を標準装備しています。その自動車一台を構成している部品類はおそらく数万点に及ぶと思いますが、宝飾品の構成部品は多くても数十点で、300万、500万という価格はめずらしくありません。
では、宝飾品の真の価値とは何なのでしょうか。私たちが考える真の価値、それは持つことへの期待、持ったことの充足感にあります。この充足感を生みだす「美しさ」こそが新たなるコストパフォーマンスであると考えています。そして、宝飾品の「美しさ」に人々が価値を認めてきた人類の長い歴史がこのことを証明しています。
宝飾品が持つ真の価値、それは「美しさ」……人を飾る美しさにあります。この「美しさ」を創造することこそ、私たち宝飾品メーカーの責務であると考えています。
宝飾品の持つ「美しさ」とは
宝飾品の持つ美しさと絵画や工芸品の美しさはどこが違うのでしょうか。それ自身でも美しくなければ宝飾品とは呼べ ないと思いますが、宝飾品が持つ決定的な特徴……それは、人を飾るものだということです。そして人を飾る装身具としての宝飾品の「美しさ」は、人類が背負ってきた諸々な歴史の背景なしに育まれなかったことを、宝飾品の歴史が物語っています。
人類が背負ってきた諸々な歴史を製作者が理解し自分のものにして行く……それが私たちの作る宝飾品の美しさにつながるのだと考えています。技術の修得や進歩は、自分が表現したい、主張したいと思う美しさの本質を製作者自身が理解してはじめて得られるのです。独りよがりなデザインや未熟なつくりの宝飾品は、素材の宝石の価値まで落とし、身につけた人を醜く飾ってしまうということになりかねません。
人への関心、愛惜から歴史、文化にいたるまで人類の歩みに好奇を抱き、そこから個々の表現技術を修得、確立していこうとする姿勢と能力が東峰の製作者には、最低の必須条件として要求されます。なぜなら、人を飾るものである宝飾品の持つ「美しさ」は、人類に共通する普遍性の中から、生まれてきたからです。
東峰の宝飾品
古代から人は、自然の恩恵に感謝し、自然の脅威におののき、自然の中に神をも抱く生活を繰り返してきました。家族から部族、集落、むら、国等が形成される過程で、長や王が誕生し、その墓である古墳等の埋葬品からは、多くの宝飾品が出土しています。考古学者や歴史家の指摘を待つまでもなく、宝飾品の起源は人を「守る」という自然との共存生活の中から誕生しました。この起源は、その後宗教の成立と共に、宗教用具や高級家具等へと繋がり、技術的にもデザイン的にも目を見張る発達を遂げてきました。より強い「守り」は、より「美しい」宝飾品を産み、女性を守ることは女性として美しく飾ることと同義となっていきました。そして、宝飾品が宗教性を帯びた結果、美しいものは聖なるものとして一層「美しさ」の質が問われるようになったのです。
18世紀になると宝飾品は、平面的な装飾からより深い独特の奥行きを持つ立体感が特徴としてあらわれ、素材の光沢、陰影の輝き、点、線、面、が渾然一体の調和を醸す普遍的な美しさを獲得しました。この普遍性は、オーソドックスでベーシックな宝飾品にのみ共通し、普遍的な美しさを持った宝飾品はゆるぎない財産として代々に引き継がれて行きました。
宝飾品の財産性は、実質的な資産価値と所有者を満足させる精神的価値の二面性に特徴があります。オーソドックスで
ベーシックな美しさという普遍性は、財産的価値の有無をも左右するのです。
東峰の製作する宝飾品は、人類と共に宝飾品が歩んできた歴史を鑑み、オーソドックスでベーシックな普遍性を基本に、素材・デザイン・つくりの微妙なバランスが醸し出す「美しさ」を追求していることが特徴です。100年後に株式会社東峰が存在し、今東峰が製作している宝飾品がアンティークジュエリーとなりえた時、初めてブランドを名のれるのだと考えています。
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